クールな外科医のイジワルな溺愛
「そんなことないです。それよりも」
「うん?」
「私の生きている世界の方が、よっぽどつまらないです。ご存知の通り、私は何の取り柄もありません。実家もないし、両親もいない。資格もなくて、一般の事務職です」
きっと他のドクターたちから見たら生態系の底辺に属するのが私みたいな人間だろう。
「私なんかと付き合ったら、ご家族に何か言われませんか。周りのドクターにからかわれたりしませんか」
麗香さんの私を覗き込んできた興味津々の顔を思い出す。純粋に私がどういう人物か知りたいというよりも、どんな価値のある人間かを値踏みするような目線だった。
「そんなこと気にしなくていい」
「気にしますよ。私たち、全然つりあいません」
「つり合いとか、そういうつまらないこと言うなよ。俺が聞きたいのは、花穂の気持ちだけ」
さっと頬に手を添えられ、強引に目を合わせられる。
「まだ俺のこと好きにならない?」
至近距離で見つめられて甘いセリフを囁かれると、まるでビームで撃ち抜かれたように脳がぐらりと揺れた。
世間の目がどうとか、そんなことどうでも良くなってしまう。
この関係に未来なんてないかもしれない。でも、私は……。
「好きに……なっちゃいました」