クールな外科医のイジワルな溺愛
身分違いの恋
それからしばらく、平穏な日々は続いた。
黎さんのマンションから会社に通い、彼が日勤の日は食事を作り、一緒に食べた。夜勤の日はお互いに無理はしないことに決めた。
「これってさ、このネズミに悪役が化けてんだっけ?」
「そうそう。で、この黒い犬の方が実はいい人で……」
ある夜。昔のファンタジー映画がテレビでやっていたので、ソファに並んで鑑賞する。私たちの間にはポップコーンの袋。
こんなふうにくつろいでいるときの黎さんは、全然ドクターらしくない。頭の良い人にありがちな、他人を馬鹿にするような言動とか、自分の知識をひけらかすようなこともない。
スペックは高いけれど、中身はごく普通の一人の男の人なんだなあと、一緒にいる時間が増えるほど実感していた。
「あー終わっちゃった。来週続編やるんだね」
テレビでの映画鑑賞を終えて両手を上げて伸びをすると、無防備な胸をぽんと軽く触られた。
「ちょっと!」
「あれ、触ってほしいのかと思った。違うの?」
誰が触ってほしくて伸びをしますか。ドキドキしながらも胸を庇って抗議を込めた目で黎さんをにらむ。
「完治まで、あと二週間か。長いな」
膝の怪我は、会社帰りに病院に寄って診察とリハビリを受け、順調に快方に向かっている。あとは今度の診察で完治と診断されれば終わりの予定。