クールな外科医のイジワルな溺愛
「完治したらどうするの」
もともと、この部屋に寝泊まりするのは膝の怪我が完治するまでの約束だった。今でもたまに黎さんが病院の帰りに郵便物を取ってきてくれたり、不審者に入られたような気配はないか確認してくれたりするけど、いつまでもこのままというわけにはいかない。
まず、アパートをどうするか。二人の生活の拠点をこのままここにしてしまうのか、別々に暮らしてたまに会うという形にするのか。そういうことを聞きたくて聞いたのに、黎さんの答えは非常に的外れだった。
「どうするって……言わせるの?」
「は?」
「セック……」
「待て待て待てー!」
慌てて言いかけた相手の口を塞いだ。そこまで聞けばいくら私でもわかる。あなたは小学生男子か。
「普通のことなのに」
くすくすと笑いながら、黎さんは優しく私の手を口から放させる。彼はすっくと立ち上がると、腰に手をあてて言った。
「さあ……一緒に寝るか」
「寝れるかー!」
そんなやる気満々の相手と寝られない。焦らしているとかそんなんじゃなくて、純粋に膝が心配。今そんな無理をして怪我を悪化させたら、整形の先生になんて言っていいかわからない。もう痛いの嫌だし。
「そうムキになるなって。可愛いやつ」
黎さんはそう言い、洗面所に私を連行し、歯磨きするように促す。
子供じゃないのに。そう思いながら抵抗なく歯磨きをし、就寝するためにそれぞれの部屋へ。