クールな外科医のイジワルな溺愛
人はひとりきりじゃ生きていけない。私にはあの母親がいて、もし彼女が一人きりだとしたら、将来的に面倒を見ろだとかいう問題になりかねない。いくら私が連絡を断っていたとしても、母の兄弟やお役所がなんやかんや言ってくるだろう。
それに、黎さんにだって実家があり、両親がいる。お父さんは黎さんに自分の病院に帰ってきてほしいらしいし、全く関係を持たないまま一生を終えるというのはこちらの方こそ難しそう。
やっぱり黎さんには、ちゃんとした実家の後ろ盾がある女の人の方が相応しいのかな……。
「どうしたの。元気がないみたいだけど」
心配そうな声をかけてくれる黎さん。
「うん……ちょっと疲れたかも」
「そうか」
黎さんは私の頭をなで、すぐにハンドルにその手を戻した。
いやだな、昼間から考えすぎだよ。将来のことなんてどうなるかわからないんだし、そんな心配ばかりしていたってしょうがないじゃない。
無理やり自分を納得させ、それ以上考えるのをやめた。
隣で運転する黎さんはいつも通りの顔をしていた。