クールな外科医のイジワルな溺愛

何日か後。黎さんと暮らし始め、四週間目に入ったところ。足の怪我はだいぶ良くなり、ほとんど事故の前と同じように歩けるようになった。

「おみやげ、何がいい?」

福岡で学会が開かれるということで、そこに参加する黎さんは数日家を空けることになった。

「おいしいお菓子をお願いします。甘いものとしょっぱめのもの、両方あるとかなり嬉しいな」

「ん。了解」

今日は日曜。黎さんはのんびり家を出て、あっちで一泊して明日からの学会に参加する。一緒に荷物を確認しながら、黎さんが言った。

「なあ、そろそろ外来の予約日だっけ」

「うん。これで最後になるといいけど」

今度の外来で見てもらって完治ということになれば、週に一度の通院もしなくてよくなる。

「そうなったらあっちのアパート、引き払うか」

「え……」

日常会話みたいなテンションでさらっと言った黎さんの発言は、聞き流せるものではなかった。

「完全にこっちに住めばいいだろ」

荷物からこちらに視線を移した黎さんが、そう断定する。

「う、うん」

「なに、嫌なの?」

「そうじゃないけど」

彼は日勤でも帰りが深夜になることもあるし、当直でも呼び出されて早く出なくてはならない場合もある。

土曜でも日曜でも関係ない。ローテーションで決めた休みの日だって、病棟の受け持ち患者さんが急変したら駆けつけなくちゃならない。


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