クールな外科医のイジワルな溺愛
そこにあったのは、この間久しぶりに見た歳をとった母の顔。まさか撮られると思っていなかったのか、びっくりしたような顔でこっちを見ているみたい。背景はぼやけていて、よくわからなかった。
「この女性が、黒崎の実家を訪ねてきたの。誰か知っているわよね」
知らない、と言ってもムダだろう。恐ろしいほど顔が強張っているのが、自分でわかる。
「私の母です。と言っても小学生の頃に両親が離婚して、それ以来一度しか会っていないんですけど」
そんな説明は不要だったようだ。麗香さんは全て承知していると言うような落ち着き払った顔でうなずく。
「たまたま私しかいないときだったから良かったのよ。あなたのお母さん、お金を貸してほしいとうちにやってきたの。どこかからあなたとお兄さんが恋人関係にあると聞いたみたいね」
「母が……」
やっぱり、お金に困っていたんだ。急に会いにきたりしたから、おかしいと思った。
コーヒーを一口飲み、麗香さんが美しい顔の眉間にシワを寄せる。
「失礼だとは思ったけど、ご両親の離婚原因を調べさせてもらったわ。花穂さん、とても辛い思いをしたのね」
いたわるような口調が逆に胸に突き刺さる。
「けれどお母さんもとても困っていると言うから、少しだけど援助させていただいたわ」
「えっ! いくらですか。私、返します」
いくらなんでも、彼氏の妹さんにお金を借りるなんて。