クールな外科医のイジワルな溺愛
「だってあんたね、そんなの相手に相談してみなきゃどう思われるかなんてわからないでしょ。迷惑って思われたらそのとき別れればいいじゃない。そもそも、お母さんがまた訪ねてくるかどうかも確かじゃないし」
ナミ先輩はテーブルの上に開けてあったスナック菓子をぽりぽり食べながらうざったそうに言う。
「ダメです。黎さんは優しいから、きっとあの母親に頼まれたらお金出しちゃう」
「出してもらえば? ドクターだもん、腐るほど持ってんでしょ」
「そういうの、嫌なんです。黎さんの負担になりたくない」
自分で家を出てきたくせに、もう黎さんに会えないのだと思うと悲しくて、涙が出てきた。
別れたくて家を飛び出したんじゃない。好きなのに、彼の力になれないどころか負担になるなんて耐えられない……。
「そうかそうか。花穂は本当に、黒崎先生が好きなんだねえ」
ようやく優しい声を出した先輩が、私の頭をなでなでする。
「しばらくは泊めてあげるよ。冷静になったらもう一度考えてごらん。私はこのまま終わったらきっと後悔すると思うけどね」
「先輩……」
「寝よう」
歯を磨き、先輩はベッドへ、私はその横の床にひかれた客用布団へもぐりこむ。明日も仕事だ。目覚まし用アラームをセットしようと携帯を取る。
すると、今まで気づかなかったけど一件のメッセージが届いていた。それは短く、黎さんからのものだった。