クールな外科医のイジワルな溺愛
ここ、静かで落ち着くなあ……。私みたいな人間には高級マンションよりこういうところがお似合いよね。
居心地の良さを感じていると、誰かが私の前の席にがさりと売店の袋を置いた。
「ここ、いいかな」
なによ、通路側にもうひとつテーブルがあるんだから、そっちに座ればいいじゃない。本気でそう言ってやろうと思って顔を上げると。
「うわ、司。どうして」
ずうずうしく正面に座ろうとしているのは、司だった。
「売店で見かけたから。どうしたんだよ、葬式みたいなオーラ背負っちゃって。彼氏とうまくいってないのか?」
図星すぎて、黙ってしまった。氷のように固まった私を見て、イスに腰かけた司が身を乗り出す。
「あれ、本当に?」
どうして嬉しそうなのよ。むかつく。
「色々あってね」
「そうだろ。あんな外車乗り回す奴と、庶民のお前と感覚が合うわけないんだよ」
「そうじゃなくて。外的要因で」
「お、出たか医者の実家の妨害。ほら見たことか」
司はとうとう笑いだした。売店の袋からからあげ弁当が出現する。その蓋をかぱりと開け、意気揚々と食べだす。
「違うし……」
むしろ妨害してきてるのは、自分の身内だもん。深いため息をつくと、既に一個目のから揚げを飲み込んだ司がこっちを見つめた。
「すげー不幸そうな顔」
「うるさいな」
「身分違いの彼氏とは別れて、俺んとこ来れば」