クールな外科医のイジワルな溺愛
そう言えば少し落ち着いた時、黎さんにどうして家出したかを問われ、麗香さんのことを話したっけ。きっと黎さんが真偽を確かめるために動いてくれたんだ。
「あの写真はね、あなたの身辺を調べるついでに探偵に撮らせたものよ」
「探偵……」
お金持ちって恐ろしい。探偵を雇ってまで、私がどんな人物か調べ上げようとしたのね。
だけど、ただの意地悪であんなに人を精神的に追い詰めるようなことをするなんて。暇なの? いや、相当性格が悪いんだわ、この人。
「でも、意地悪なんてするものじゃないわね。お母さん、重病で入院してるんですって? 申し訳なかったわ」
麗香さんは頭は下げなかったけど、声はしおらしかった。ぼーっと見つめていると、おもむろに高そうなブランドバッグから分厚い封筒を取り出す。
「これ」
「はい?」
うっかり受け取ってしまって、ビックリした。封筒の表に、『お見舞い』と書かれていたから。これ、お金じゃん。
「う、受け取れません。お気持ちだけ」
こんなの受け取ったら、何をお返しすればいいの。
恐縮してしまい、封筒を突き返すけど麗香さんは頑として受け取ろうとはしない。
「いいの。借りをチャラにしただけよ。でもね、お兄さんのことは諦めないから。いつかうちの病院に帰ってきてもらいますからね」