クールな外科医のイジワルな溺愛

だけど最後に娘の顔を見たくて興信所に今の居場所や会社を調べてもらったら、お父さんが亡くなったことを知って余計にショックを受けた。居ても立っても居られなくなり、衝動的に私に会いに来て見事な返り討ちに会い、ますます生きる気力をなくしていたらしい。

救いようのないバカ女じゃん。彼女が友達だったらそう言い放ってやるのだけど、病床に横たわっている相手に向かって罵声を浴びせる気にはならなかった。

母は手術で体力を消耗したせいか、目を開けたばかりなのに、もう眠そうな顔をしていた。

「入院費とか、どうしようねえ……」

長年お金で苦労してきたんだろう。心配するのはそこか。自分の体のことじゃないのか。そう思うと少し気の毒になる。

「気にしなくていいよ。私がなんとかするから」

「でも……」

「大丈夫」

本当は、なんとかするあてなんて全然ない。まあでも、真面目に働いていけばなんとかなるだろう。なんともならなければ、キャバ嬢でもやるか。雇ってもらえたらだけど。

ため息をつかないように細心の注意を払い、テレビ台の上に置かれた書類を手に取る。

「これは?」

「それ……えっと……これからの治療の方針とか、色々な同意書とか……黒崎先生が置いていったの……」

「書いておけばいいの?」

病院って面倒くさい。CT撮るのにも造影剤を使うとなれば同意書、内視鏡検査も同意書、輸血でも何でもかんでも同意書がいる。


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