クールな外科医のイジワルな溺愛


『はい。俺だけど』

携帯の向こうから黎さんの声がした。ドクンと心臓が跳ね上がる。

「あの……今、どこに……」

『今? 医局だけど。オペが終わったとこ』

医局って何。よく知らない。オペが終わったところってことは、仕事中に違いない。でも。

「今から会えませんか。私、母の病室の近くにいます」

『ああ……ちょっと待てよ……』

カタカタと、パソコンのキーボードを叩く音が聞こえてくる。仕事中に邪魔しちゃいけないなんて基本的なことはもちろんわかっている。けど、今日だけは我慢できそうにない。

「先生、ドクターコールです!」

少し大きな声を出す。けれど忙しい時間帯なのか周りに看護師さんもおらず、患者さんもいないのが幸いだ。

『は?』

「緊急ドクターコールです」

電話の向こうから、黎さんが次に私が何を言うのか待っているような気配を感じた。こみ上げてくる涙が声をにじませた。

「先生、今すぐ私に会いに来てください」

病室に置いてあった書類の最後の一枚を握りしめる。そこにはこんなことが書いてあった。


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