クールな外科医のイジワルな溺愛
「任せておけ。一生かけて、お前を守るよ」
耳元でそんなことを言うものだから、余計に涙が堰を切って溢れだした。
「やっぱり泣き虫だ」
わずかに体を離した黎さんが、指で私の涙をぬぐう。そして、そっと唇を重ねた。
以前このテラスで流した涙は、お父さんを思って流した悲しみの涙だった。
お父さん。私もう、『ひとりで生きていく』なんて言わないよ。過去を責めなかったお父さんを見習って、私も前を向いて歩いていく。
お母さんの病気はいつどういう状態になるかわからない。けど、きっといい方向へ向かうと信じて、頑張るしかない。
大丈夫。これからはひとりじゃない。私には黎さんがいる。
「お前の花嫁姿、お母さんに見せてあげような」
彼はいつも私に幸せな夢を見せてくれる。
これからも、幸せな未来を夢見続けていこう。
生きているうちは、できるだけ楽しいことを考えて生き延びるしかないんだもの。素敵な夢を見た方が勝ちだよ。ね、そうでしょ。
こっくりうなずくと、ご褒美のキスが与えられる。
私は夢中で、黎さんにしがみついた。
【end】