クールな外科医のイジワルな溺愛
☆おまけの後日談
母の手術が終わって二週間後……。
あんなによぼよぼしていたのに奇跡的な回復を見せている母は、まだベッド上安静を命じられているけれど、引水と食事の許可が出て元気を取り戻しはじめている。
もともと初期の治療をボイコットしていたため、もう少し入院は必要そうだけど、このまま体力が戻れば、ひとまず退院できることもできそうだとか。
もちろん、お父さんと同じように退院しても抗がん剤の点滴や、放射線治療のために外来に通わなければならないということになりそうだけど……。
「どこに帰るの?」
ある日、母に聞いてみると母はケロッと答えた。
「元の団地に決まってるじゃない。他にいくところないんだもの」
そりゃそうだけどさ……。一人で置いておくとうっかり薬をスキップしちゃったり、外来の日を忘れたりしそうだな。
でも、『じゃあ一緒に住みましょう』なんて軽々しく言える間柄でもない。だって、十年年ぶりに再会したばかりだもの。
だからと言って、まだ高齢者でもない母だ。介護施設は莫大なお金がかかるし、受け入れ先があるかどうかもわからない。
「ん~……ねえ、近くに引っ越してこない?」
せめて、SOSを出されたらすぐに駆けつけられる距離に……。