クールな外科医のイジワルな溺愛
「まあいっか!」
通勤用のバッグをつかみ、玄関で靴を履く。そこで狭い6畳のワンルームを見返り、慌てて靴を脱いだ。
また部屋の中に上がり、隅に置いてあるカラーボックスの上の写真に手を合わせる。そこには、父の遺影と位牌が。
「行ってきます、お父さん。帰ったらお水替えるから。ごめんね」
まったく、親不孝な娘だ。ひどい挨拶を終えると靴を履きなおし、外に出た。
「……芹沢花穂。なんとかならないのその格好」
なんとか始業時間に滑り込みセーフした私は、午前中にこれでもかと仕事を言い付けられてヘロヘロに。昼は食堂で一番安いかけそばを食べていた。
「んあ?」
口を半開きで見上げたら、そばの端っこがはみ出した。慌てて飲み込む。
「ナミ先輩。おはようございます」
「なにトンチンカンな挨拶してるの。もう昼よ」
そりゃあわかってるけど。一つ年上のナミ先輩は私の向かいの席に座った。トレーの上にはサラダとみそ汁と、オクラのおかかあえと……とにかくヘルシーなものが何品か乗っている。