クールな外科医のイジワルな溺愛
「そうね。じゃあ、また連絡して。先生、失礼します」
黒崎先生にウインクでもしそうな勢いで熱く視線を送って帰っていく先輩。たしか、彼氏いたはずなのにな……。
「親切な人だ。親戚でもないのに、これだけやってくれたのか」
片付けられた部屋の中を見て、黒崎先生が感心したように言う。
「ええ、そうですね。ありがたいです」
多少おせっかいで現金なところもあるけれど、面倒臭そうな顔をしないでここまで来てくれたことがありがたい。親切だよね。上司なんて事故のことを疑うし、顔も見せやしないさ。
「これだけやってくれるってことは、それだけあんたが好かれてるってことだな」
「え?」
「嫌いなやつのためにあんなに動いてくれないだろ」
そう言われて、初めて気づいた。そう言われれば、そうだな。
「あんたが会社でちゃんと仕事をしてたってことがわかるよ。良い人格の人間なんだろうってこともな」
良い人格かどうかは謎だけど。そっか、私、先輩に認めてもらってたんだな。私だって仕事をしなかったり、悪口ばっかり言ってるような人に親切にしようとは思わないものね。
「ところで先生、何をしにきたんですか? 当直明けでしょ?」
先輩がいなくなった途端、ため口になったけど。やっぱりこの人黒い。黒崎だけに。