クールな外科医のイジワルな溺愛
「あーもーわかりましたよ。わかったから、脅さないで」
気づいてないだけで脳や他の臓器に影響があったらなんて、考えただけで怖い。
「そうそう、鉄剤も出しておくから。貧血も治せ。抜糸は手術から二週間後。その翌日帰ればいい。それまでリハビリしておけ」
二週間かあ……。いくらリハビリが始まっても、一日じゅうできるわけじゃないだろうし。どうやって時間を潰そう。
「あんたさ、二週間後には俺に会えなくなって寂しいなとか、そういう気持ちはないわけ?」
「え」
ベッドに座る私と、向かいの椅子に座って私の足を台に乗せ、器用に包帯を戻していく黒崎先生。その指先が肌に触れると、甘い痺れが走るような、不思議な感じがした。
いやいやいや、『会えなくなって寂しい』とかそんなこと言うから意識しちゃうんじゃん。
別に、会えなくなっても寂しくなんてない。所詮は医者と患者だもの。特別な関係になれるなんて思ってない。
「動揺してる」
ふっと笑った黒崎先生の息が膝にかかる。くすぐったくて、着ていたパジャマの裾をさっと下ろした。
「していません」
ベッドにもぐりこもうとした瞬間、黒崎先生の胸から聞いたことのない着信音がした。