クールな外科医のイジワルな溺愛

慣れない車イスを自分で押して行くと、自動販売機が置いてある談話スペースに着く。自動ドアをくぐってその中に入ると、テレビの前に何人か患者さんとその家族がまばらに座っていた。

甘いものでも飲んで、ゆっくりテレビでも見よう。チャンネルは自由に決められないけど、番組なんて何でもいいや。

ボトル缶のカフェオレを買い、ちょうどイスがどけられていた窓際のテーブルにつく。誰もいないテーブルは広かった。隣のテーブルではおじいちゃんの患者さんと、その奥さんと見られる人がくつろいでいる。その人たちが一番先に来たのか、テレビのリモコンがそこに置いてあった。

テレビから流れるのは、昔の時代劇の再放送。つまらないけど、別に苦痛ではない。お父さんもさすがに、こんな古すぎる時代劇は見てなかったな……。

ぼんやりとテレビを見ていると、自動ドアの向こうから若い男の人が入ってきた。同じ年くらいだろうか。でっぷりと太っていて、短い髪が金色に染められている。肉に押し上げられ、目が線になっていた。

彼はテレビの画面を見て舌打ちすると、自販機で炭酸飲料を買った。そして、なぜか私の方に近づいてくる。他にも空いているテーブルはあるのに。


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