クールな外科医のイジワルな溺愛

「さあ……。あ、家族に連絡しなくちゃ。じゃあ、さようなら」

あまり深く関わらないでおこうと、さっさと席を立つ。車いすをゆっくり押して病室に戻る間、妙に視線を感じて振り返った。

すると、炭酸飲料を買ったばかりのはずのとび職の男性が、それを持ったまま自動ドアの前に立ってこちらを見ていた。

うわ、気持ち悪い。もっとゆっくり休憩してればいいのに。

すぐにでも逃げたいけど、車いすで暴走するわけにもいかない。結局のろのろと個室に戻り、さっさとドアを閉めた。



三日後。

「痛い痛い痛い~!」

一昨日からリハビリが始まったので、決められた時間に看護補助者さんに連れられてリハビリ訓練室に。

広い訓練室の中で、何人もの患者さんがそれぞれの療法士さんと一緒にリハビリをしている。膝の関節も動かさないとすぐに硬くなってしまうということで、早めにリハビリを始めるのが普通だそうだけど……。

初めはこっちがイスに座って療法士さんが膝を動かしてくれる。それだけで痛い。骨は綺麗に固定されたとはいえ、一度折れてずれたダメージは大きい。ボルトも入っているし、手術の時の傷もまだ抜糸をしていない状態で、動かすとそこも引き攣れて痛い。


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