クールな外科医のイジワルな溺愛

初日から泣きそうになり、それを何とか耐え、やっと今日から歩行訓練に移れることに。テレビドラマでよく見るような二本の平行棒を頼りに、ゆっくりと歩きだした。

個室のベッドからトイレまではたった4,5歩だったから、松葉杖を使えばなんとか片足だけで行けた。けど、いざ一度崩壊した右ひざに自分の体重がかかると、なんとも言えないくらい痛い。

「ひぐぅ~」

だけど、ここを越えないと元のように歩けるようにはならない。療法士さんにそう脅されて、悲鳴を噛み殺しながらリハビリに励んでいた。

そのとき、視界の端にちらっと金色の豚さんが見えた。と思ったらそれは、この前談話スペースで会った、感じの悪い男の人だった。部屋の片隅でリハビリを受けているみたい。怪我したんだもん、そりゃああっちだってリハビリするよね。

「痛いって。だるいなー、もうやらなくてもいいって。そろそろ退院だし」

面倒を見てくれている療法士さんに悪態をついている。患者様は神様とでも思ってるのか?

「好かん!」

そっちは見ないようにして、自分のリハビリに集中する。右ひざを庇いながら歩いていると、左に負荷がかかりすぎる。打撲した全身のところどころも痛いし、どうすれば一番負担を少なくして歩けるか……。

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