クールな外科医のイジワルな溺愛
「こんにちは。頑張ってるじゃないですか」
「わあ!」
何の前触れもなく背後から顔をのぞきこまれて、のけぞって転びそうになった。
「おっと危ない」
余裕の有り余る表情で私の背中を支えたのは、顔をのぞきこんできた張本人。黒崎先生だった。青いスクラブと白衣を着ている。そう言えば昨日と一昨日は会っていなかったっけ。たった二日なのに、すごく久しぶりのような気がして、何故かくすぐったい。
「どうしてこんなところに……」
外科の先生がこんなところに現れるもの? 他の患者さんも療法士さんも、珍しそうに黒崎先生を見ている。
「整形の患者さんはほとんど担当しないから、どんな感じかと見に来たんだ」
本当かしら。まあ、他の理由を探すこともないけど。
「普通に生活するのに困らないレベルにならないと、退院させてあげられませんから。その調子で頑張ってくださいね」
「うっ。はーい……」
早く退院したがっていた私に、笑顔でプレッシャーをかけてくる先生。
わかってるわよ。よく考えたら、電車内で松葉杖通勤はしんどい。毎回座れる保証はないし、駅の階段も怖い。先生が休みの間に保険屋さんが来て、入院にかかる費用は全部払ってもらえることになったから、ちゃんとリハビリして帰ろう。