クールな外科医のイジワルな溺愛

リハビリは一人30分程度と時間が決められている。もりもり歩き終えると、病棟から看護助手さんが車いすを持って迎えに来てくれた。看護助手さんというのは特に資格を持っていなくてもできる、看護師さんのお手伝いをする人のことを言うらしい。

松葉杖があれば歩けるんだけど、病棟から外に出た時に何かあってはいけないという理由で送迎してもらえる。

「順調に退院できそうですね~」

四十代の太ったおかっぱ頭のおばちゃん助手さんに車いすの後ろから話しかけられる。

「ええ、良かったです」

「若いし、早く職場復帰しなきゃね」

ほんとそれだよ。私が悪いわけじゃないけど、忙しい職場で休むこと自体、理由はどうあれ良く思われてないことは確か。

せっかく大卒からいる職場だ。定年まで食らいつくと決めているんだから、居心地悪くならない方が良いに決まっている。

「でも、芹沢さんが退院すると、黒崎先生に会えなくなっちゃうな~。芹沢さんの回診に来る時くらいしか、なかなか姿を見られないんだもの」

患者搬送用のエレベーターに乗り込むと、助手さんがそんなことを零す。

「あはは……イケメンですからねえ」

まあ、あの見た目だもん。おばちゃんたちの間でアイドル化するのはうなずける。先生良かったね、ファンがいっぱいいて。


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