クールな外科医のイジワルな溺愛
『言葉づかいは丁寧だし、優しいし。仕事もできて、なのにちっとも威張ったところがなくて。看護師も患者さんもみんな先生が大好きなんですよ』
前に包帯を変えてくれた看護師さんの言葉を思い出す。黒崎先生はみんなに優しい。私には意地悪なことも言うけど、よく考えれば仕事の合間にリハビリの様子を見に来てくれるなんて、やっぱり優しいのかも。
でも、自分だけが特別なんて思っちゃいけないだろうな。先生はお医者さん、私は患者だもの。
きっとあの人は、どの患者さんにも優しいのよ。父にも優しくしてくれた。だから、私だけが特別なんじゃない。
つらつらとそんなことを考えている間に夕日は落ちて、病室が暗くなってきた。ため息をつき、部屋の灯りを点ける。テレビをつけてぼんやりしている間に、食事が運ばれてきてもそもそと一人でそれを食べる。
味気ない食事だ。怪我はしたけど胃腸は変わりないんだから、もっとパンチのあるものを食べさせてくれてもいいのに。
一階にいけば売店があるけど、そこまで松葉杖で行くのはだるいしな~。なんて思い、テレビや雑誌で時間を潰していたら、いつの間にか消灯時間に。
灯りを消し、ベッドに潜り込む。少しするとすっとドアが開く気配がして飛び起きた。