クールな外科医のイジワルな溺愛
「先生?」
もしや、黒崎先生が来てくれたんじゃ。そう思ってがばりと飛び起きた。けれどそこにいたのは、様子をうかがいに来た看護師さんだった。各病室を回っている途中なんだろう。私が飛び起きたからか、ビックリした顔をしている。
「あ、あはは、寝ぼけちゃった。ごめんなさい。ご苦労さまでーす」
私、思い切り『先生』って言っちゃってたよね……。恥ずかしくて、顔まで布団を被る。
こんな夜に先生が来るわけないじゃない。何を期待しているの?
昼間、リハビリ以外では動くことが少ないせいかなかなか眠れない。やっとうとうとしてきたころ、また病室のドアがすっと開いた。
どうせまた看護師さんの見回りだよね。そうだ、眠れないって言ったら睡眠薬とかもらえるのかな。聞いてみようかな。
まばたきしてしっかり目を開け、看護師さんに話しかけようとした、そのとき。
「むぐっ!?」
誰かが、私の口を手で塞いだ。いったい誰? 何が起きてるの?
その誰かはあろうことか、ベッドの上に乗ってくる。怪我をしている右足をかろうじて避け、私の上に馬乗りになった。
ひいいい、やめてよ、なにこれ! 混乱してまばたきだけを繰り返しているうち、だんだんと目が慣れてきた。