クールな外科医のイジワルな溺愛
「どうしました」
緊張したような声。この声は……!
ぱっと目を開け、入り口を見る。そこには、前髪が乱れた黒崎先生が。
「せ、んせ……」
先生が来てくれた。それだけで涙が出そうだった。
「何やってるんだ! 離れろ!」
黒崎先生は白衣のまま病室に入り、看護師さんを下がらせた。そして、後ろから男を羽交い絞めし直す。
「ぐわああっ」
どうやったのかわからなかったけど、黒崎先生は看護師さん二人でも全く歯が立たなかった金髪男を、床に引きずりおろした。腰に乗っていた男の体重から解放され、ホッとしたのもつかの間。
「離せ、離せ! やってやるんだ、こいつ俺を馬鹿にした」
金髪男は暴れて叫ぶ。その上に馬乗りになり、黒崎先生は自分より体格の良いその男を押さえつけたまま怒鳴る。
「鎮静剤を。早く」
「は、はい!」
看護師さんがナースステーションへ走っていく。そして注射器をプラスチックの細長い容器に入れて持ってきた。
「押さえててくれ」
暴れる男は、看護師さんたちを引っ掻いたり噛みついたりする。手を付けられない状態ってこのことを言うんだろう。そのうちに廊下からどやどやとたくさんの人の顔がのぞいた。