クールな外科医のイジワルな溺愛
「黒崎先生、大丈夫ですか?」
警備員さんや男性ドクターが入ってきて四人がかりで男を押さえる。手の空いた看護師さんたちは私の身体を隠すように急いで布団をかけてくれた。
なおも暴れる男の上で、黒崎先生が看護師さんに渡された手袋をはめ、注射器を構える。片手で消毒綿の包装を持って歯で噛み、引きちぎる。
さっと男の腕を消毒すると、黒崎先生は狙いすましたように、暴れてぶれる男の腕に一瞬で注射器の針を突き刺した。
彼がぎゅっと親指に力を入れる。薬液が男の中に入っていく。暴れていた金髪男は観念したかのようにだんだんと静かになっていった。すごい。あんなに暴れている人に瞬時に注射できちゃうなんて。
うとうとと眠るような表情になった男から、黒崎先生が降りる。
「ストレッチャーを。彼を精神科病棟の空いている病室へ。あそこなら外から鍵がかかる」
「じゃあ私がそちらに連絡しておきます」
精神科のドクターだろうか。ひとりのメガネをかけたドクターが返事をした。
「すぐそいつの家族に連絡して。それだけ動けるなら、明日強制退院させる」
てきぱきと指示を出すと、看護師さんたちがストレッチャーを運んできて、みんなで男を乗せる。男性ドクター二人が落下防止用ベルトをしめ、病室の外へと運んでいった。
「大丈夫ですか、芹沢さん」
若い看護師さんが涙目で話しかけてくる。