クールな外科医のイジワルな溺愛

裾を直しながら、私の顔をのぞきこむ先生。その目が優しすぎて、気が付いたら彼の胸の中に飛び込んでいた。

かたかたと全身が震え、涙が零れてくる。先生やみんなが来てくれなかったら私、今頃どうなっていたことか。

「そうか……怖かったな。俺が来たからもう大丈夫だ」

黒崎先生は茶化しもせず、優しく抱きしめてくれる。

「落ち着くまで、こうしててやるよ」

彼が優しいのは、彼がドクターで私が患者だから。わかっているのに、勘違いしそうになってしまう。

きっとそれは、私の方が黒崎先生に惹かれてしまっているから……。

先生、治してください。あなたといると胸が痛いんです。


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