クールな外科医のイジワルな溺愛
フェードアウトと思いきや


結局、金髪男は翌日早朝に強制退院させられた。

「あいつ、昔から素行が悪くて家族にも見放されていたらしいな。緊急連絡先は職場になっていたが、今朝になるまで誰にも連絡が取れなかった。もう自宅に帰されたそうだから、心配するな」

黒崎先生は当直明け、九時くらいに私の部屋に寄ってくれた。

昨夜黒崎先生が当直でいてくれたのは奇跡だった。昼勤を終え、そのまま家で休めるはずが、急病になったドクターの代わりに急に当直に入ることにきまったんだって。

「びっくりしたよ。久しぶりのドクターコールがこの病棟だったから、まさかと思って」

黒崎先生は腕組みをして息をつく。

この病院でのドクターコールとは、病棟や外来で患者さんが急変、もしくはあの金髪男のように錯乱状態になり、主治医がつかまらなかったり、看護師だけで解決できない場合に、病院の中の手の空いているドクターを招集するために使われるそう。だから昨夜、当直のドクターが何人も集まってくれたんだ。

一晩開けても、看護師さんは“個人情報だから”と、金髪男がどうなったかは何も教えてくれなかった。

ただ“これからは見張っているから大丈夫”と言われても信用できなくて、朝まで一睡もできなかった。だって、深夜の看護師さんはたった三人で、金髪男が大部屋からいなくなっていたことにも見廻りするまで気づかなかったんだもの。


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