クールな外科医のイジワルな溺愛
同情するところは一ミリもない。けど、あんなやつのために自分が不快な思いをするのはごめんだ。幸い、みんなが助けてくれたから取り返しのつかないことにはならなかったし。
「ああいう人が普通に街を歩いていると思ったら怖いですけどね。とにかく先生には助けていただきました。ありがとうございました」
ベッドに座ったままぺこりと頭を下げると、テレビの前に立っていた先生がその頭を押さえ付けるようにわしゃわしゃとなでた。
「大丈夫だよ、そんなに心配するな」
「え、えっと……」
私何も、心配とか言ってませんけど。お礼を言っただけなのに。
「退院までまだ少し日にちがあるけど、もう同じようなことはないようにするから。今日中には産婦人科病棟に移れるように病棟師長どうしで手配しているはずだ。産婦人科は患者の配偶者と親しか入れない。入口でチェックもあるし夜は消灯時間を過ぎれば誰も入れないから、不審者が病室まで入り込むことはまずないだろう」
やっと手を離されて見上げると、黒崎先生は優しく笑っていた。
先生、私が退院するまで怖いだろうと思って……。産婦人科ってことは、女の人しかいないんだよね。怪我はだいぶ良くなってきているし、整形の病棟じゃなくても大丈夫ということか。