クールな外科医のイジワルな溺愛

その後は体調が悪くなることもなく、順調にリハビリをして入院期間を終えた。

「ほら、綺麗なものだ。ほとんど目立たないだろ」

処置室で抜糸が済んだあと、私の膝を見て黒崎先生が言う。これほど男性に膝を凝視されることってあるのかな。やっぱりこれだけは慣れない。いくら相手がお医者さんでも恥ずかしい。

「他に痛いところはないか?」

「大丈夫です」

「よし。じゃあ、退院の許可を出す。明日の昼でどうだ」

「はい……わかりました」

大きい病院では、こうしていきなり退院の日が決まることは珍しくない。お父さんが入退院を繰り返していたときも、こんな感じだった。病床を開けるため、軽症の患者からさっさと退院させられる。

「誰か迎えに来てもらえそうか?」

「うーん……なんとか頼んでみます」

ナミ先輩に頼んではみるけど、平日だからどうかなあ。認知症の老人でもないから、タクシーが拾えれば自分で帰れる。意外に多くなってしまった荷物を一階まで運んでっていうのがしんどいかも。

あ、ATMに寄ってから会計もしなきゃ。保険会社からお金が振り込まれるのはまだ少し先だし。


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