クールな外科医のイジワルな溺愛
そうだ、ナミ先輩に明日来てもらえるか聞いてみなきゃ。入院中のパジャマは持ってきてくれてあるけど、普通の服がない。事故にあった時着ていたものは、手術の際に切られてしまったし。
個室ならスマホで通話しても問題はない。お昼休憩を狙ってコールすると、ナミ先輩はすぐにつかまった。
「……というわけなんですけど、明日お昼休憩に迎えに来てもらうことって……無理ですか?」
貴重な休憩中に非常に申し訳ない。けれど、他に頼れる人もいない。プライドを捨ててお願いしたけど、帰ってきたのは私以上に申し訳なさそうな先輩の声だった。
『ごめん! 今私重大なミスを犯して、とても抜けられる状態じゃないの』
「えっ、どうかしたんですか?」
『デザイン部とパターン部と営業部の社員の給料、全部入力し間違えて……』
「うそ!」
ナミ先輩はあまりうっかりとしたミスをする人ではない。タイミングの悪さとか運の悪さが重なってしまったとしか思えない。いや、もしかしたら私が休んでいることで先輩にいつも以上の負担がかかったのかも。
『何考えてたんだろねー。ほんと、自分が信じられないよ。振り込まれる前に気づいたことだけが不幸中の幸い』
しゅんとした声は、嘘や冗談を言っているようには聞こえない。きっと上司から散々怒られたんだろう。