クールな外科医のイジワルな溺愛
「ごめんなさい……私、明後日には復帰しますから。フォローできるかわからないけど、休んでたぶん頑張ります」
『何で謝るのー。花穂は悪いことなにもしてないよ。でも復帰はマジありがたい。ひとりで帰れそう? 他に誰か頼めそうなの?』
へこんでいるはずなのに私をいたわってくれる先輩の言葉にじんとする。
「大丈夫です。復帰の件は自分で課長に連絡しておきますね」
『ん。じゃあ、気をつけて帰るんだよ』
通話を終えると、はあと深いため息が出た。仕方ない、とりあえず今ここにあるTシャツと部屋用ベロアパンツにロングカーディガン羽織って帰るか。そんな格好で外に出るなんて、ギャルみたいで嫌だけど仕方ない。
「しかもこれ……」
靴も事故にあったときに片方なくなってしまったらしく、ナミ先輩が買ってきてくれた子猫のキャラクターが付いている健康サンダルしか、外に歩いて出られそうなものがない。先輩、なぜこれを選んだの。せめて無地のゴムサンダルにしてほしかった。一昔前のヤンキー感半端ない。
「いや、贅沢言っちゃいけない」
何も困らずに入院生活を送れたのは先輩のおかげだもん。いいじゃない、タクシーに乗っちゃえば、服もサンダルも他人からは見えないよ。そもそも、自分の見た目にこだわる人間じゃないでしょ、私は。黒崎先生も明日は休みだって言うし。