クールな外科医のイジワルな溺愛

翌日の朝。

「お世話になりました」

看護師さんに体温と血圧を計ってもらい、次回の整形外科の予約票を受け取る。忘れ物チェックをしてもらえば準備完了。会計書類を持って予定よりかなり早く病室を出た。

看護師さんたちは忙しそうにしている。ナースステーションに向かってあっさり挨拶をして病棟を後にする。

ナミ先輩が持ってきてくれた旅行カバンの持ち手を両肩に通し、リュックのような状態にして松葉杖をつく。

肝心の膝の方は、手術をしたおかげでギプスで固定することはしなくていいみたい。抜糸したあとはサポーターをつけて歩くことになっている。けど、やはりまだ痛みはあるから事故の前のようにスタスタとは歩けない。

でも、やっぱり猫ちゃんサンダルはつま先がスースーするな。明日からはスニーカーで出社しよう。松葉杖通勤、しんどいだろうな。全治二か月と言われたから、あと一か月半くらいかな? 

のろのろとエレベーターに乗り込み、一階に降りる。会計を済ませるとタクシー乗り場に向かった。

これで本当にこの病院ともさよならね。もう二度と来ることがないといい。

病院前のロータリーから振り返り、上を見上げる。病院は大きすぎて、そのてっぺんまで視界に入らなかった。


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