クールな外科医のイジワルな溺愛
「おい、そこのダサダサ骨折女。お前だよ、芹沢花穂」
名前を呼ばれて、ハッとした。ゆっくり顔を上げると、そこには高級車から降りてくる黒崎先生が。
白いTシャツに黒いジャケットみたいな形の襟が付いているカーディガンを羽織り、下はデニム。そんなシンプルな格好が海外セレブみたい。
「お前、迎えは? 昼頃来るはずじゃなかったのか」
私服の黒崎先生に見下ろされると、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。私、先生が休みだと思って完全に油断してた。ほぼ部屋着にすっぴん、髪は一本縛り。可愛くない……!
「えっと、あの、お迎えに来てくれるはずだった先輩の都合が悪くなりまして」
「あの人か。他の会社の人間は? 友達は?」
「平日はちょっと……みんな仕事だし、いくら仲が良くても仕事を休ませるのは気が引けるって言うか……」
ぼそぼそと言い訳すると、先生ははあとため息をついた。
「座れ」
「え?」
「いいから、座れ」
何だろうと思い、すぐ傍にあったベンチに腰を掛ける。松葉杖を左に置くと、先生は私の背中から大きな荷物をもぎとり、さらに松葉杖も担いでしまう。何をするのかと思えば、先生は車のトランクを開け、それらを中に入れてしまった。