クールな外科医のイジワルな溺愛


何でもわかったような顔をして。心の中で悪態をつくけど、愛想笑いで返した。そういう考え方もあるだろう。そして先輩は、悪い人ではない。ただ純粋に、自分の考えが一般的で当たり前だと思っているだけ。

気の毒だなんて思ってくれなくていい。人生は何があるかわからない。突然病気やけがで働けなくなるかもしれない。保険で全ては賄えないし、備えておくに越したことはない。

一般事務の給料でそれなりに蓄えようと思うと、やはり食費と見た目にかけるお金を削るしかない。

それでいいと思っているけど、たしかに周りのオシャレ人間を見ると、私はいったい何が楽しくて生きているんだろうとふと思う。虚しくなるときもある。でもいいんだ。人生が楽しいものだなんて思わなければ。

これは修行であって、いつかゴールにたどり着くまで生き残る。産まれた限り、生きなきゃならない。死んだ父の言葉だ。

「そうですね。とりあえず補色コーデはしないように気をつけます」

そばを平らげ、トレーを持って立ち上がる。そのとき、ちょっとよろけた。ふわりと視界が歪んだ気がしたけど、数度まばたきをしたら正常に戻った。そんな私に、ナミ先輩が説教を続ける。


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