クールな外科医のイジワルな溺愛
「え? あのう」
「最後の荷物。これが一番重そうだ」
ふっと黒崎先生の顔が目の前に近づいてきて、どきりとする。そのまつ毛の長さに目を奪われていると、ふわりと体が宙に浮いた。
「へっ!?」
「じっとしてろ、怪我人」
ゆらりと体が揺れる。慌てて黒崎先生の肩につかまり、自分の状況を再確認した。
私、黒崎先生にお姫様抱っこされてる~!
「いったい何を……」
状況が飲み込めないまま、助手席に乗せられた。黒崎先生が運転席に乗り込み、シートベルトを締める。その瞬間、後ろからクラクションを鳴らされた。バックミラーを見ると、今まで通らなかったタクシーが後ろに迫ってきている。
「迷惑になるからもう行くぞ」
「いや、でも私、タクシー待ってて」
あれに乗りたいんですけど。シートの間から乗り出して後ろを見る私の頭を両手で捕まえて、黒崎先生が言った。
「俺が送っていってやる。おとなしくしろ」
先生は長い手を伸ばし、私をシートベルトで固定した。胸がかするような近さにドキドキしながら、まだ状況を整理できないでいる。
「出すぞ」
先生がアクセルを踏む。まだ戸惑っている私を乗せ、高級外車は病院の外へと走りだした。