クールな外科医のイジワルな溺愛

「パンチの強いものが食べたいです!」

はっきり答えると、黒崎先生は声を出して笑った。

「了解。でもその格好じゃちょっとな」

そう言われて、自分の格好を顧みる。Tシャツにベロアパンツに猫ちゃん健康サンダル……たしかに、これじゃ一緒にお店に入るのはためらうよね。

「よし、ちょっと付き合え。仕事は明日からだろ?」

「ええ、そうですけど……」

ちょっと付き合えっていったいどこへ。ご飯食べさせてくれるだけでじゅうぶんなんですけど。何なら、その辺のお弁当屋さんでテイクアウトしてアパートに送ってくれたら嬉しいんですけど。

そんな私の気持ちも知らず、黒崎先生は行先について何も言わずに、車を走らせる。アパートからはどんどん遠ざかっていく。

「そもそも先生はお休みなのにどうして病院にいたんですか?」

黒崎先生の考えていることが全然わからない。病院ではあんなにあっさりお別れしたのに、なぜ今になって車に乗せてご飯を食べさせてくれる気になったのか。

「ああ……なんとなく、こんな風になってるんじゃないかと思って」

「こんな風に? 私が一人きりで帰ることになっているような気がしたってことですか?」

聞き返すと、先生は小さくうなずく。


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