クールな外科医のイジワルな溺愛
「っていうのは冗談。ちょっと用事があって病院に来たから、お前がまだいるかと思って病棟に寄ったんだ。そうしたら看護師がひとりで帰ったって言うから」
「だから?」
「心配になったんだよ。また事故に遭って膝が割れたりしたら俺の手術が無駄になるからな」
そう話す黒崎先生はちょっと照れくさそうに見えた。
「そう……ですか」
心配してくれたんだ……。そう思うとこっちまで照れくさくなってくる。
私が退院したら、医師と患者という関係でなくなったら、先生とはもう二度と会えないと思っていた。整形外来の予約日に病院でばったり出会っても、多忙な先生は私のことなんて忘れてしまっているだろうと。
そっか、お休みだけど私の退院のことを思い出して病院まで来てくれたんだ。ひとりで帰ったと知って、わざわざロータリーまで様子を見に来てくれた。
どうしてそんなに私のことを気にかけてくれるんだろう。整った横顔を見ていると、また期待しそうになっている自分に気づく。
私はただの、通りすがりの患者じゃないんじゃないかなんて。