クールな外科医のイジワルな溺愛
それ以降先生は病院の話をしなくなった。周りの景色を見ながら、たわいもない会話をして三十分ほど車に乗っていただろうか。やっと目的地に着いたころには、すっかりお腹が空いていた。なのに、車を降りて先生に招かれた先にあったのは。
「ちょっと、ここって」
大通りに面した、ずらりと並ぶ有名ブランドショップ。車に乗りながら、だいぶにぎやかな街中に向かってきたとは思っていたけど……。
黄色く染まる葉をつけた街路樹に寄りかかりそうになる。歩道橋がかかった道の向こう岸にもブランドショップが並んでいる。
中にはうちの会社でライセンスを取って日本向け商品を作っているブランドもある。とにかく聞いたことのない名前がないくらい。どの店舗も光り輝いて見える。ま、眩しすぎる……。
「どこがいい?」
「は?」
「だから、快気祝いだよ。一緒に食事する服を選ぼう」
黒崎先生は当然のようにダサイ私の松葉杖を持っていない方の手を握る。その様子を、通りすがりの女性二人組に二度見された。
ちょ、ちょっと。手、手が……。どうして繋がれてるの。恋人でもないのに。