クールな外科医のイジワルな溺愛
「本当に真面目だな。誰も見ていないんだから、好きな服を着ればいいのに」
黒崎先生は苦笑し、握ったままの私の手を引く。私の足に負担をかけないようにゆっくりと進むその背中の後ろに、隠れるようにして進んだ。
私も恥ずかしいけど、先生も恥ずかしいんでしょ。だったら手なんて繋がなければいい。離れて歩けばいいのに、どうしてそうしないの?
先生のせいなのか、初めて高級ブランド店に足を踏み入れる緊張からなのか、心臓がとくとくといつもより早いリズムを刻んでいた。目当ての店の入口をくぐると、店員さんがこちらに笑顔を向け……一瞬固まった。先生の後ろに隠れている、ヤンキーみたいな私を発見したからだろう。
やっぱり場違いすぎる。ガラス張りの壁、ストライプ柄の絨毯が敷き詰められた歩きにくい床。ちょっと見たマネキンが着ていたパーティードレスがウン十万。異世界に来てしまったようで、めまいがしてきた。
「すみません」
黒崎先生は看護師さんにするように、丁寧に遠巻きに見ていた店員さんを呼ぶ。
「彼女、足を怪我しているんです。だからゆったりした……そうだな、ワンピースかなにか、適当に見繕ってください」