クールな外科医のイジワルな溺愛

「すご~い」

私、シンデレラみたい。なんて鏡を見てはしゃいでいると、お腹の虫がぐううと鳴った。

「ほら、行くぞ」

知らない間にここのお会計も済ませてくれていたらしい黒崎先生に肩を叩かれる。

今の、聞かれていたかな。先を歩く先生の方が、小刻みに震えている。あ、笑ってるみたい。聞かれてたんだ。恥ずかしい……。

「パンチの強いものって言ったな」

先生はお腹の虫を聞こえなかったことにしてくれたみたい。エレベーターに乗り込むと、同じビルの4階に移動する。扉が開くと、いいにおいが漂ってきた。正面の柱には“レストラン街”という看板が。

とんかつ屋さんやお寿司やさん、フレンチやイタリアンが並ぶ廊下を歩く。どの店の看板を見ても、ランチが三千円から五千円くらい。

「たっか……」

値段ばかり見てしまう自分が悲しい。“普段の自分なら絶対に入れない”って思ってばかりで、もううんざりしてきたな。せっかく綺麗な格好をさせてもらったのに、貧乏根性はそのまま残っている。

「ここでいいか? 前に他の先生と入ったけど、味は良かったと思う」

立ち止まった先生が急に振り向くからドキッとした。ちゃんと看板を見ると、美味しそうな中華料理の写真が。たしかに、中華ならパンチ力の強いメニューがありそう。




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