クールな外科医のイジワルな溺愛


「ふうん……いいけど、これ真っ赤だぞ」

メニューに載っていた写真を指さし、黒崎先生が確認するように顔をのぞきこんでくる。たしかに、よく見たら唐辛子とラー油たっぷりっぽい。真っ赤っていうより、真っ赤っ赤って感じ。

「いいです、辛いの好きなんで」

パンチの強いものが欲しいと思っていたし。辛いものは得意だし、大丈夫だろう。

「ん。わかった」

先生が片手を上げると、すぐにウェイトレスが近づいてくる。先生は中華ちまきと豚の角煮とフカヒレ、そして二人でシェアできそうなサラダを注文した。

混みあっているわりにすぐに料理が運ばれてきた。私の目前には、アツアツ……というか、まるで地獄の釜のように赤く煮えたぎる麻婆豆腐が。

「甘い飲み物とかご飯とか、要らないのか」

サラダを取り分けながら、黒崎先生が心配そうに言う。大丈夫、サラダがあれば乗り切れる。交互に食べるのよ。と決めてレンゲを持ち、麻婆豆腐を口に運ぶと。

「あ、美味しいです」

市販のタレで作るものとはやはり違う。豊かなスパイスの香りと、ひき肉のコクと、とろけそうにクリーミーなお豆腐の……。

「ふぐっ!」

味わっているうちに、舌がしびれだした。どっと全身の毛穴から汗が吹き出す。


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