クールな外科医のイジワルな溺愛


これ、一口目は美味しいけどやっぱ辛い。後追いで辛い。

ヒーハー言いながらコップの水を飲む。これ、気管に入ったら即死亡のやつだわ。

「おい、大丈夫か。残してもいいんだぞ。他のもの頼め、ほら」

テーブルにドンとおいたコップに、ウェイトレスを呼んでお水を汲んでもらう先生。メニューを差し出しながら、そう言ってくれるけど。

「大丈夫、美味しいです」

せっかく作ってもらったものを残しちゃいけないって、お父さんが言ってたもの。

私は根性ではふはふ言いながら麻婆豆腐を口に運ぶ。何の刺激もなかった病院食より美味しい。けど、辛い。でも美味しい。

やがて口の中だけじゃなく、唇までじんじんと痛んできた。赤く腫れてしまっているのではと思うほどだ。せっかくのメイクが汗で流れてしまうかも。っていうか、鼻が壊れて鼻水も出てきそう。

ハンカチで汗をぬぐいながら一心不乱に麻婆豆腐に向かっていると、前から押し殺したような笑い声が聞こえてきた。思わず手を止めて顔を上げると、フカヒレ煮込みのお皿に箸を向けたまま、黒崎先生が肩を震わせて笑っていた。

「はは……可愛いな、お前」


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