クールな外科医のイジワルな溺愛
そんな先生の細くなった目の方が可愛い。かーっと余計に顔が熱くなった。こんなもの、デートで注文しちゃいけなかった。シュークリームやミルフィーユくらい、デンジャーだった。もっとキレイに、優雅に食べられるものを注文しなきゃいけなかったのに。
「可愛くなんかなくていいです。私は……ひとりで生きていくんですから」
先生から視線を外し、残りの麻婆豆腐をサラダと交互に口に放り込む。なんとか全てを平らげると、すっとウェイトレスが地獄の釜を下げ、代わりに涼やかな透明の器にちょこんと盛られたアイスクリームを置いていく。これ、私頼んでないけど……。
首をかしげると、微笑んだままの黒崎先生と目が合った。
「よく完食したな」
“食べていいよ”と言うようにアイスクリームの器を指で押す先生。もしかしなくても、私が奮闘している間に先生が注文してくれたんだ。先生もいつの間にか料理を平らげていた。
「ありがとうございます」
ガッとスプーンを持ち、アイスクリームをすくって口に運ぶ。ひんやりとした冷たさとバニラのしつこくない優しい甘さが、火傷したような口の中を癒してくれる。