クールな外科医のイジワルな溺愛
「最上階にはプールとジムがある。自分でリハビリができるな」
ははは、と笑う黒崎先生。いや、笑えません。そんなオシャレセレブばかりがいそうなジムに一般の居候が入り込むなんてできない。というか、作業療法士さんがいないと、リハビリは難しいんじゃ。
「もしかして、その下が先生の……?」
上に行くほど家賃が高いって言うよね。お医者さんだもん、一番上を全部屋貸切るとか、楽勝じゃないの?
「いや、申し訳ないがうちは十三階。雇われドクターなもんでね」
「はあ……」
開業医ならもっと儲かるのか? あんな大きな病院のドクターだもの、雇われって言ってもただの経理の私の給料とは比べ物にならないんだろうけど。……いかん、さっきからお金のことばかり考えてる。
エントランスの自動ドアを指紋認証で開き、エレベーターに乗り込む。十三階に着き、ある部屋の前で黒崎先生がポケットからキーケースを取り出す。部屋の鍵はごく普通のディンプルキーで、上下に付いていた。
「どうぞ」
ドアを開き、先に入るように促される。おそるおそるその中に入ると、広々した玄関の先に、意味のわからない空間が。ホールってやつ? 正面にある飾り棚の上には、なんの表情もない幾何学模様の絵が飾ってある。うちなんて、玄関開けたら二秒で部屋の中よ。