クールな外科医のイジワルな溺愛
「俺は逆側の端っこ。玄関に近い方だな。だから何も心配するな」
「あ、そうですか。良かった」
黒崎先生の睡眠の邪魔をしちゃいけないものね。ほっと胸をなで下ろすと、先生は含み笑いを浮かべる。
「そんなに心配しなくても、怪我人を襲ったりしないよ」
上から見下ろしてそんなことを言う先生。ぼっと頬が上気するのを感じた。
「だ、誰もそんな心配してません!」
と言いながら、思わず壁伝いに後退してしまう。
「ふうん。ああでも良く考えれば、膝に影響のないことはしてもいいよな」
「は……?」
膝に影響のないこと? 首をかしげると、先生は大股で距離をつめ、私を壁に縫い付けるように両手で柵をする。見下ろす二重の瞳に射貫かれ、息が止まりそうになった。そんな私に、先生は完璧な微笑を浮かべて囁く。
「例えば、キスとか」
言葉の意味を飲み込む暇もなく、先生が顔を寄せてくる。
ちょっと待って。このままだと本当に……!
唇が触れる直前、膝から力が抜けて腰が砕けた。ずるずると背中を壁につけたまま、床に座り込む。
「あらら。そんなに嫌がらなくても」
先生はからかうような口調でパッと壁から離れる。