クールな外科医のイジワルな溺愛

突然怒ったような先生の声がして、さっきとは違う意味でどきりとした。

”戻らない”って……なんだろう。もしかして、元カノとよりを戻す話とか? レイカって、絶対女の人だよね? もやもやと胸の中に黒い渦が巻く。

「おい、大丈夫か?」

「は、はいいっ」

会話を終わらせたらしき先生が部屋の中をのぞきこむので、怪我をした足で跳ねそうになってしまう。

「今夜、どうする?」

そうたずねる黒崎先生はいつものクール顔。怒っているようには見えない。

「え、ええっ!?」

「なにエロい想像してんだよ。夕飯何食べたいかってイミ」

あ、あああ、そういうこと。じゃあ誤解しちゃうような言い方しないでよ。

「何も想像してません。ええと、何でもいいんですけど。下のコンビニとか」

「それならレストランにするか。コンビニじゃ味気ないだろ」

松葉杖のない私に自然に手を差し伸べ、立ち上がらせてくれた先生は、にっと笑って言った。

「せっかくの同居記念日だ。楽しい夜にしよう」

それって……美味しいディナーを食べようってことだよね? 久しぶりに男の人とデートまがいのことをしたせいか、妄想スイッチが暴走モードに入っちゃってるみたい。

上手い返事が思い浮かばなくて、赤べこのようにただ首を縦に振った。

私……完治まで心臓、もつのかな?


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