腕の中の神様



「会いたかった。」


昔と変わらないその姿を見たら、もっと涙が溢れた。



雷も雨も止んだ。


部屋中に降った星が君と俺を包んで、頭の痛みと体のダルさを取り払っていく。



「大丈夫、君は一人じゃないよ。」

決まり文句のように同じセリフを言って、涙を拭ってくれた。



覚えてないだけかもしれないけど、初めてちゃんと顔を見た気がする。


綺麗だ。



腕を掴んで、引き寄せた。


俺より全然大きかった君が、今では俺の腕の中に収まった。



君は、誰にも渡したくない。



ギュって強く抱き締めたら甘い匂いがして、酔いそうになる。


「君は誰?」

って聞くと何も答えてくれない。


歳は?とか、家はどこ?とか、そんな事を聞いても、やっぱり答えてくれない。




「ずっとそばにおって。」

願望を、投げ掛ける。



「いるよ。ずっと。」

やっと返事が返って来た。


いつもの決まり文句以外の言葉を初めて言った。


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