腕の中の神様
「嘘。俺が泣いた夜にしか君は現れないだろ。」
腕を緩めて、君の顔を見る。
いつも笑顔の君が、哀しい顔をして笑う。
違うよって首を振って
「見えてないだけ。君が、私を見ようとしないだけ。ずっと、いるのに。」
意味のわからない事を言う。
見ようとしないって…俺はずっと見たいって、会いたいって思ってたよ。
「意味わかんね。俺はずっと会いたかったのに。」
「そうじゃなくて、君が無理をするからだよ。」
君が今にも泣きそうな顔をするから、俺まで泣きそうになる。
そんな顔をさせてるのは俺なんだよな。
「君は昔から早く大人になりたいって言った。それで、無理して自分を繕って、大人になろうとした。」
倒していた体を起こして、溢れる涙を乱暴に拭う。
「本当の君を、隠さないで。」
何もかもを知っているような口振りで、俺より哀しい顔をしないで。