お見合い相手は、アノ声を知る人
会長を出て、足早に去ろうとする彼を呼び止めた。


「ちょっと」


低い声を出すと、背中を向けてた人が面倒くさそうな顔して振り向く。


「何だ」


動じない雰囲気にイラッときて、つい声を張り上げた。


「どうしてあんなことを言ったの!?私は貴方にお見合いも付き合いも断るって言ったじゃない!」


なのに、あの場でキスマークを故意に付けたなんて言うなんて。
孫思いの会長が喜ぶに決まってるじゃないか。


「ああ、なんだ。キスマークの話?」


クスッとバカにするように笑われ、更に気分が逆撫でされる。
そうよ、何で…と言い返せば、呆れるように言い渡された。


「あんたが男の前で無防備に酔っ払うのがいけないんだろ。これでも俺は自重してやった方だぞ」


いけなかったか?と聞き返してくる。


「いけないに決まってるでしょ!あんなこと言えば確実に会長を喜ばせることになるんだから!」


噛み付くように言うと、フッと笑みを浮かべてーー


「俺はあんたがシラを切り通すかと思ったんだよ。自分には身に覚えがありませんって。なのに、まさかあの場であんな風に首を隠すなんてな」


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