お見合い相手は、アノ声を知る人
あれでは身に覚えがあると言ってるようなもんだ…と言い、だから仕方なくあんな言い方をしたんだ…と話した。



「まあ結果としてジジイは大喜びだったからいいんだけど」


私はそれを聞いてきゅっと唇を噛んだ。自分が髪を切ろうなんて思わなければ良かったんだ。


「とにかく、今回のことはあんたの立ち回りが悪かっただけで、俺の責任じゃないんだから怒るな」


キッパリ言い切ると踵を返して行こうとする。
その彼の前に回り込み、私はジロッと睨み上げた。


「もう一度言っておきます!私は貴方と付き合う気なんてありません。キスマーク一つ付けられたからって、思うようには動きませんから」


「可愛いげのない女だな」


「だったら二度と誘わないで!」


背中を向けて逃げ出そうとしたら、ぐいっと手首を引っ張る。驚きよりも痛みが走って、キッと顔を見上げながら振り返った。


「跡が付けられたくらいでガタガタ言うなよ。部屋に来てた男とはそれ以上のことをしてたんだろ」


腕を引き寄せると顔を近付けて笑う。
アノ声を聞いた…と言ってた言葉を思い出して、ぐっと息を飲んだ。


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